"セクハラ怖い"上司の悩み
「昨夜遊びすぎたんじゃないの」――。東京風月堂の男性店長が契約社員の女性にセクハラ発言を繰り返したとして、先日、同社に約170万円の支払いを命じる判決が出た。相手がセクハラと感じたらセクハラ。それが怖くて「部下の女性と雑談できない!」上司が増えているらしい。
●“地雷”が埋まっていそうな話題は避ける
ある管理職の話。
部下、それも独身社員には、「夏休み、どこか行ったの?」と絶対に聞かないそうだ。雑談が妙に弾むと困るからだ。
「どこか行ったの?」
「ちょっとハワイに」
「いいなあ。誰と?」
「……恋人とです」
「へえ、楽しかった?」
「それってセクハラじゃないですか」
「おいおい、ちょっと待ってよ」と言いたくなるが、相手がどう感じるかでセクハラは決まる。「この程度なら」は通用しない。
それでなくても、セクハラ対策が強化された改正男女雇用機会均等法が昨年度から施行され、企業はますます敏感になっている。
だから“地雷”が埋まっていそうな話題は最初から避けるというわけ。
「正直、何がセクハラになるのか分からないんです。もう女性社員と雑談するのが怖い」とメーカー課長のAさん(42)が言う。
「部下の女性に地方転勤の話が持ち上がったんです。こっちは親切心で『ご両親の介護とか結婚の予定とかないの?』と聞いたつもりが、その女性は『セクハラです!』とむくれてしまった。『結婚』が余計なお世話だったんでしょうが、過敏すぎませんか? それでも上に直訴されたら、負けるのはこっち。女性の部下と話すときは気を使いすぎてヘトヘトです」
Aさんは、部下と飲むときは「男同士」と決めている。女性社員は怖くて誘いたくないそうだ。
風月堂のケースでは、男性店長は契約社員の女性に「処女じゃないんでしょ」「キスされたでしょ」なんてことも言ったらしい。
これは論外としても、雑談は人間関係の潤滑油。セクハラを意識しすぎて会話がなくなったら、職場はギスギスするばかりだ。
こんな話もある。
商社勤務のBさん(35)は、上司から「それ、まずいよ」と指摘されてドキッとした。
「その日、たまたま素肌にワイシャツを着ていて、乳首が透けていた。上司は『それをセクハラと感じる女性がいるらしい』と言うんですよ。私が『露出狂みたいな格好をした女もいるでしょう』と反論したら、上司に『そういう発言が危ないんだ。苦情が出ないように事前に芽を摘む。ネットにでも書き込まれたら、まずいだろ』とたしなめられた。納得いかないですよ」
●飲み会の恋愛トークで“逆襲”された
厚生労働省によると、各都道府県の労働局雇用均等室に寄せられたセクハラ相談件数は、昨年度1万5799件。前年度比で40%増という。女性は黙っちゃいないのだ。
「和気あいあいの職場で、プライベートの話もしていたんですが……」と、アパレル勤務のCさん(38)はタメ息をつく。
「飲み会でよく恋愛トークもしていたんです。その時は後輩の女性もノリノリで聞いていたし、信頼関係もできていると思っていた。が、会議でケンカになり、険悪なムードになった途端に、『飲み会でセクハラされた』と上に訴え出た。いまさら蒸し返されても……と思いますが、うかつでした。向こうは“逆襲”したつもりなんでしょう」
ある企業では、男性上司が人事考課で女性の部下と面談するとき、必ず第三者を同席させるという。評価に不満を持った女性が「セクハラされた」と言い出さないようにするための“予防策”でもあるらしい。
東京女学館大教授の西山昭彦氏(経営学)が言う。
「コンプライアンス強化の流れがある。そのうえ、職場で起きた不祥事が、すぐにネットで公表されてしまう。内々で処理することはもう難しいし、そうなるとペナルティーを科さざるを得ない。企業もシビアにならざるを得ないわけで、職場の雑談でも、とにかく部下のプライバシーには一切触れないという方向に進んでいることは確かです。雑談で関係を深め、部下のモチベーションアップを図るタイプの上司はやりにくいでしょうが、雑談すべてが悪いわけじゃありません。中身が問題であって、雑談を選ぶ能力が問われる時代というわけです」
福島の県立病院で先日、停職3カ月の処分を食らった40代のセクハラ男性職員がいた。女性職員に「今日の下着、何色?」なんて言葉をかけていたという。これを雑談とはいわない。
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